story
「△tetsumono△」
鉄敷だけが残されていた
岩間鉄工所は、日鉄(現・新日鐵住金釜石製鐵所)の下請け会社で修行した祖父が昭和21年に独立して始めた会社です。この工業団地には昭和42年に移りました。当時は鉄鋼業関連会社が10社ありましたが、当初から残っているのは2社だけになりました。
2011年の東日本大震災で津波の被害を受け、建物自体は流されずに残りましたが、機械は全てダメになってしまいました。唯一、鉄敷だけがその場所に変わらず残っていました。
最初は、あまりの惨状と先の見えない避難所での暮らしの中で、再開なんて不可能だろうと思っていました。しかし、応援してくれている取引先の方から機械を寄付していただいたり、仕事の発注が来るようになり、鉄工所の仕事を続けていこうという気力が戻ってきました。
その後、流されてしまった自宅を建て直すことになり、建築家の渡辺ガク氏と出会い、その勧めで自宅用に鉄製のインテリア小物をつくることになりました。
それが、「△tetsumono△」の始まりです。
「錆びるけど、それがいい」
その言葉にハッとさせられた
自宅を建て直すにあたり、鉄製の小物や表札、階段などを作ってみないかと建築家の渡辺さんから言われた時は驚きました。
鉄なので、当然経年変化で錆びてきます。手垢がつくとそこから色も変わってきます。でも、それがいいという建築家の言葉にハッとさせられました。鉄という素材は錆びるもの。それを愉しめばいいのだと。
鉄を曲げたり、溶接したり、裁断したり、作業の多くは手作業で行うため、オートメーション化された工場とは違い、個体差もあります。それは言うなれば製品の個性です。ロゴを切り抜いた看板もレーザーを使用すれば切り口はシャープに仕上がりますが、あえて切り口に味を求めて、プラズマカッターを使用しています。
鉄は、ともすれば冷たく硬い印象ですが、「△tetsumono△」の製品には、あたたかく優しい印象をもってもらいたい。鉄そのものの素材、質感をより活かした風合いある仕上げを手作業で行う、それが「△tetsumono△」の目指すものです。